「同じころ、あなたの母上、ゆきさんも、湯布院にいました、風祭さん」
その話で、それまでほとんど無表情だった蒼太の眉が、ほんの少し上がる。
そこで男も聞くべきだと判断したのだろう。重い口を開いた。
「あなたがお知りになりたいのはここだったんですね? 風間と、母上の間になにがあったのか……風間が、自分の父親なのではないかと疑っている、そうなんでしょう?」
そう指摘されても、やはり蒼太は返事をしなかった。
だが黙ったまま睨み返す表情から、先を続けろと言っているのがわかる。男は仕方なく、先を続けた。
「風間とゆきさんに交流があったのかはわかりませんでした、しかし二人の住まいは極近く、顔を合わせる機会はあったと思います、その後、風間は婦女暴行殺人未遂を犯し、再び逃亡しています、その被害者はゆきさんではありませんが、彼女もほぼ同時期に湯布院から姿を消していました、その後の消息はわかりません」
これはそのころの写真ですと男は一枚の紙を見せた。
それは当時の指名手配写真のようだ。