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ボーイズラブ | SF・ファンタジー・ホラー | オメガバース イタズラな情欲 4 | 江原 里奈 [p.1/p.2]

『オメガバース イタズラな情欲』

ボーイズラブ | SF・ファンタジー・ホラー | オメガバース イタズラな情欲 4 | 江原 里奈 [p.1/p.2] | 幻創文庫[p.1/p.2]

オメガバース イタズラな情欲 4

[p.1/p.2]
 
 ――眠りから目覚めたとき、知らない男にのしかかられていた。
 いや、男は一人じゃない。見覚えない男が三人……イヤ、一人はどこかで見た顔だった。
 たしか、研究所に出入りしていた業者だ。たしか、缶詰なんかを運んでいた気がする。俺やアリサのことを嘗めるような目で見ていたから気味悪くてよく覚えていた。
「起きたか、坊や」
「……なん、で……ここは」
 覚醒は中途半端で、頭がガンガンに痛んだ。
 ここは、俺がソファーで居眠りした部屋とは趣が違う。
 占い師の家というよりは、場末の宿屋。
 部屋中に漂っていたオリエンタルな香りはどこにもない。その代わりに、男どもの汗や体臭、埃などがぐちゃぐちゃに混ざって発酵したような、安宿特有の変な匂いが漂っている。
 俺はそんな粗末な部屋の、藁で作られた粗末な寝床に押さえつけられていた。
 この男たちは、なぜ俺をこんな欲情した目で凝視しているのか?
 あの婆さんは、いったいどうしたのか……?
 俺の頭には、大量の疑問符が飛び交っていた。
「な……、あの婆さんはどこだ……!?」
「婆さんのこと、心配してやってんのか? お人好しだなぁ、坊や」
「……?」
 戸惑う俺を見て、男たちは顔を見合わせてニヤニヤしている。
「あの婆さん、ただの年寄りじゃねーぞ。この国で一番がめつい守銭奴ババアだぜ。坊やの妹を貴族に売って、坊やを俺たち三人に売ったんだからな」
「エッ!?」
 俺の思考回路は、男の言葉でグチャグチャになった。
 あの婆さんが……まさか!
 俺とアリサに食事を分け与えてくれようとした、あの婆さんが俺たちを男に売った……?
 そんなひどい話、あるわけない……巷には溢れているかもしれないけど、俺たちの身の上に降りかかってくるなんて信じられない。
 しかし、彼らが語ることは嘘ばかりじゃない気がした。
「しかも、俺たちだけじゃ済まされないぜ?」
「えッ……」
「婆さんは確かに占い師だが、サブビジネスでこの娼館のオーナーをやってるんだ。坊やは、死ぬまでここで男どもに奉仕して暮らすんだぜ」
「……う、そ、だろ?」
「ウソかどうかは、後でこの館で働いている他のオメガに聞けばいいだろう?」
「オメガ……」
「婆さんの死んだ旦那がここをやり始めたのは、婆さんがお得意の妖術でオメガをおびき寄せて、客を取らせるように仕向けたからってもっぱらのウワサだぜ?」
「まったくコワい婆さんだよ。拉致監禁したオメガたちの稼ぎで大金作ったらしいぜ? 博打好きの旦那の借金を全額返してやったって話だし、俺ももうちょっと年いってたら婆さんと結婚してもっと楽な暮らしするんだけどな」
「へぇー物好きだねぇ! 婆さん相手にアッチが勃つかどうかが、まず問題じゃねーか?」
 男たちが下品な話で盛り上がっているのを聞きながら、俺は全身の血が引いていく音を聞いた気がする。
 婆さんに騙されたのは腹立たしかったが、騙された自分もたしかに悪かったかもしれない。
 この世に善人なんていない……オメガの性に生まれた不幸な者たちは、ベータやアルファに搾取される。欲情を誘う道具として使われることがほとんどだ。
 たぶん、研究所での何の苦労もない生活のせいで、俺はきっと平和ボケしていたのだろう。
 いくらでも反省しよう。教会に行かせてくれれば、何時間でも何日でも懺悔し続けることもいとわない。
 俺は……俺はどうなってもいいんだ。
 でも、アリサはか弱い女の子だ。今、俺以上に恐ろしい思いをしているはず。
 早く助けてあげないと……!
 このままだと、えげつない貴族ヤローの囲われ者になってしまう。そんなことになったら、天国にいる母さんにどれほど謝っても許してもらえないだろう。