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ロマンス小説 | ミステリー・サスペンス・ハードボイルド | 王宮に濡れた姫武将〜17世紀フランスの愛欲〜 due | Nagisa [p.1/p.7]

『王宮に濡れた姫武将〜17世紀フランスの愛欲〜』

ロマンス小説 | ミステリー・サスペンス・ハードボイルド | 王宮に濡れた姫武将〜17世紀フランスの愛欲〜 due | Nagisa [p.1/p.7] | 幻創文庫[p.1/p.7]

王宮に濡れた姫武将〜17世紀フランスの愛欲〜 due

[p.1/p.7]
 
◆◇◆◇◆

 約一週間後――。
 太陽が真上に昇り切ったお昼頃に出かけたポルトスが息を切らせて家に戻って来たのは、昇りきった太陽が殆ど傾き沈みかけた夕暮れ間近のこと。
 妻は畑で夕食用の野菜の収穫中で、もうひとり家に残った優良は台所に立ち夕食の準備に取り掛かっていた。
 当初、客人なのだから気を遣う事はないと言われていたものの、次第と打ち解けあっていくと気遣いとは別の感情で自然と家の中の事を手伝うようになり始めていた。
 日本にいた頃は確かにお姫様の部類だった優良も、支倉のおじとの航海で、日本にいたままでは体験できなかった事をいくつもし、それらを身に付けてしまっていた。
 当然、それなりの料理も出来るまでの腕がある。
 そんな優良が包丁を持ち、材料を切ろうとしたまさにその瞬間、背後からポルトスが優良の名前を呼びながら駆け込んできた。
「こんなところにいたのか、優良。料理なんて妻にやらせればいい、出かけるぞ」
 手に持っていた包丁を取り上げ、その腕を掴み引っ張る。
「ちょっと待って。出かけるってどこへ? もう日暮れだわ」
「帰って来たんだよ、あいつが。アトスが。今から会いに行こう」
「今からって……そんなに慌てなくても、明日だっていいじゃない」
「そうだが、明日になるとまた捕まらないかもしれない」
「忙しいの? だったら尚更だわ。相手の方の都合も聞いた方がいいんじゃない?」
「そういう気遣いをしていたら、会えるものも会えなくなる。優良は会いたくないのか?」
「会ってみたいわ、ポルトスのお友達だもの。でも、どうして急いで会わせようとするの?」
「どうしてって……あいつと会っておいて損はない。何かと有利になる。早い方がいい」
 ふたりがそんな会話をしている間に外は次第に夜の景色へと変わっていく。
 畑から奥さんが戻り、ふたりの会話を耳にした直後、「こんな時間から若いお嬢さんを連れまわすなんて」とポルトスが一方的に怒られるという流れに変わり、この日は彼の方が引き下がるしかない方向へとなってしまった。
 翌朝――と言っても昼近く、改めてふたりがアトスを訪ねる事になるのだけれど、そこにアラミスの姿はなかった。

◆◇◆◇◆

 下町の広場から王宮に向かって大通りを歩く。
 一週間ほど前に立ち寄った飲み屋に向かう横道をも通り過ぎる。
 そこから更に歩き進むと、品のいい食事処があり、そこで立ち止まり店内へと入っていった。
 食事をするというよりは茶を楽しむという感じのする店内には、綺麗に着飾った女性の姿も多い。
 その店内を見渡し、目的の人物を見つけたのかポルトスは優良の手を引いてその者がいるテーブルへと一直線に向かって行った。
「よう、アトス。やっと捕まえたぜ」
 テーブルにはふたりの男性がいて、ひとりはポルトスと近い年齢で、肩ほどまである金色のウェーブヘアがとても印象的で、薄らと残している髭も自然な感じでとても似合っている。
 もうひとりはとても若い、優良と同世代くらいの青年で赤毛に近い栗毛を後ろひとつに結んでいる。
 髪色は一度見たら忘れられない、なかなか印象的なもので、優良はその髪色に少しばかり心当たりがあったが、その者がポルトスの友人と行動を共にしているはずがないと思い、その者を脳裏から消し去った。