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ボーイズラブ | ノンジャンル | 謹賀新年 | 羽邑崇 [p.1/p.6]

『月に叢雲、華に風。<全91話>』

ボーイズラブ | ノンジャンル | 謹賀新年 | 羽邑崇 [p.1/p.6] | 幻創文庫[p.1/p.6]

謹賀新年

[p.1/p.6]
「はい蒼太さん」

旭が酒を注ぐ。
蒼太はそれを飲み干しながら、向かい合った席に座る圭を見つめた。
新年早々、圭が新年の挨拶と称してやって来たのだ。
一日は吟にも暇をやったので、完全に二人きりだと思っていたところだったので、ちょっとだけ気分が悪い。
圭にいて欲しくない訳ではない、ただまさか一日から来るとは思わなかったのだ。



「はい、圭くんもどうぞ」

珍しく、飲むほうではなく、もてなす側にまわった旭が圭のコップにも酒を注ぐ。
その日、おろそうと思ってとっておいた、蒼太と圭の故郷の地酒「壬武」だ。
学生時代、よく飲んだ。
それをまたこうして圭と飲む事になるとは、色恋沙汰とは別の意味で、感慨深いモノがある。
旭の勺をうけた圭は嬉しそうに微笑む。


「ありがとうございます、旭くんもどうぞ」

俺が注ぎますよと酒瓶を受け取り、圭は旭のグラスに酒を注ぐ。
二人で瞳を見交わし、かるく会釈をして、笑いあう。
それはなんとなく、若く初々しい恋人同士のようにさえ見えた。

圭といるとき、旭はいつもよりほんの少し華やいで美しくなる。
気のせいと言ってしまえばそれきりの、微妙な変化だ。
ただのヤキモチかもしれない。

だが少し…… ほんの少しだけ、胸が痛むのもたしかだ。
圭はわざと、今日、旭と二人きりだと知ってて来たんだろうなと、注がれた酒に口をつけながら、蒼太は思った。
自分が取り上げた立場なのだから、あまり言いたくないが、そこを考えるとちょっとムッとする。
しかし旭の手前、あまり不機嫌な顔もできない。


「あ、蒼太さん、もう飲んじゃったの? だめじゃん、乾杯してからにしてよね」
「あぁ? うっさい奴やな、そんなんええやんか」

「だめ! せっかく圭くんも来てくれたんだから、みんなで新年をお祝いするの」
「はいはい」