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ボーイズラブ | 業界人 | X'mas NightにKiss | Nagisa [p.1/p.11]

読み切り

ボーイズラブ | 業界人 | X'mas NightにKiss | Nagisa [p.1/p.11] | 幻創文庫[p.1/p.11]

X'mas NightにKiss

[p.1/p.11]
 
 この年のクリスマスイヴ、オレは人生最大の危機と言っても過言ではない体験をしてしまうなんて、まだこの時は知らなかった。


◆◇◆◇◆


「相沢保(あいざわ たもつ)さん?」

 クリスマスイヴ、小さな商店街のパン屋もこの日だけは結構忙しい。
 一番若いからというだけの理由で、オレはひとり店頭販売を仰せつかってしまった。
 日暮れと共に積みあがったクリスマスケーキは売れていき、やっと目で見て数がすぐわかるくらいまで減った閉店間際、その場に不釣り合いな派手な女がオレの名前をフルネームで口にした。
「そうですけど……どちらさん?」
「わたくし、こういう者です」
 言いながら差し出された名刺には、○×△事務所と書かれている。
 事務所? オレは嫌な予感がした。
 事務所と名のつくもので思いついたのがヤッちゃん関係。
 オレ、何かしてしまったのだろうか……
 そんな不安が拭えないオレのことなんてお構いなしに、彼女は勝手に話を進める。
「おめでとうございます、相沢保さん。我事務所の看板タレントでもある瑞江悟(みずえ さとる)とのクリスマスデートに当選されました。つきましてはこの後明日の日付が変わる寸前まで瑞江と楽しいクリスマスの日をお過ごしください」
 目の前に1枚の紙をチラつかせる。
 その紙を受け取り書いてある文字を一字一句逃さず読めば、確かに『瑞江悟とのクリスマスデート当選おめでとう』と書かれ、有効期限やら禁止行為やらいろいろ書かれていた。
 ――が、当選したわりにはオレの反応がいまいちどころか、むしろ警戒しているようにも見えたのだろう、女性の方が怪訝そうな表情で聞いてくる。
「あの……申込みなさいましたよね?」
 申し込みは確かにした、した記憶はちゃんとある。
 あるのだが、オレが瑞江悟とデートをしたくて申し込みをしたわけじゃない。