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官能小説 | 露出・羞恥 | ハプニング妄想ストーリーA「全裸で演技した女優」 | 洸 奏 [p.1/p.2]

『ハプニング妄想ストーリー』

官能小説 | 露出・羞恥 | ハプニング妄想ストーリーA「全裸で演技した女優」 | 洸 奏 [p.1/p.2] | 幻創文庫[p.1/p.2]

ハプニング妄想ストーリーA「全裸で演技した女優」

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由香里は自分の演技力に自信があった。大学の演劇サークルでは随一の実力派だと認められている。中学から大学まで演劇部に所属し、高校時代には顧問の教師に某メジャー劇団のオーディションを受けてみろと言われたほどである。由香里自身はその話に乗り気だったが市役所勤めの父親が頑として許さず、夫の意見には決して逆らわない母親も反対にまわったため、せっかくのチャンスをフイにした。いや、オーディションを受けたところで合格しなかったのかも知れないが、由香里にとってはチャレンジすらできなかった悔しさが強い。

その結果として由香里は大学に進み、演劇サークルに入部したのだ。もともと明るい性格なので学業もサークル活動も楽しんでいるものの、気持ちの奥底に両親への不満が堆積している。そのため入学早々に知り合ったサークルの先輩とゴールデンウィークには深い仲となり、ときには外泊もして親に心配をかけていた。


そんな由香里が、秋の演劇祭作品の主役に抜てきされた。通常、入学したばかりの1年生が主役を務めることはあり得ない。しかし今回は部員たちが満場一致で賛成した異例のキャスティングだった。監督は4年生の男子学生で、卒業後は北海道の実家に帰って家業を継ぐことが決まっている。彼は「これがオレの最後の作品だからよろしくお願いします」と後輩たちに頭を下げた。

劇の内容は、貧困ゆえに娼婦となった女が肉体を武器にのし上がり、最終的には弱者救済の基金を設立するという社会派のストーリーである。筋書きそのものは良いのだが、いかんせん華がない。そこで監督が特別な見せ場を作りたいと言い出したのだ。

「由香里、おまえ脱げるか?」
「ステージの上で?ええ、いいですよ」
「ステージ上だけじゃない、通路からステージまでだ」

全員が怪訝な顔をする。

「3幕目のスタートは由香里が騎馬で後方から登場するんだ。ほら、騎馬戦の騎馬だよ。男3人が組んで先頭は太田!」

太田というのは由香里が付き合っている2年生だ。

「太田なら背が高いから前が隠れるだろ。もちろん前バリはつけるから安心しろ」

みんながザワザワと騒ぎ始めた。賛成意見もあれば反対意見もある。最終的には由香里の気持ち次第ということになり、全員が彼女の顔を見た。そのとき由香里はワケのわからない反骨精神を刺激され、驚くべきことを言いのけたのだ。

「観客がひとり残らず注目するところはカラダのどこか、わかりきってますよね?通路を歩くとなると、四方八方から見られるんです。それなのに肝心な部分に前バリがあったら興ざめだと思います。私は前バリなしで演ります!」


夏から秋にかけて稽古が続く。由香里は練習中やリハーサルのときは脱がないと決めていた。本番は11月初旬の3日間……そのときに備えて生理の予定日をずらしたり、無駄毛の処理をしたり、やることが色々ある。本番の半月前から太田とのセックスも控えていた。行為の最中に傷やアザなどがついたら困るからだ。

そして迎えた初日。フライヤーには明記していないが「女優が脱ぐらしい」というウワサを聞きつけ、開場時間が近づくと劇場の外に行列ができた。学生劇団とはいえ演劇祭への参加である。会場は公共施設内にあるホールで、キャパシティは1,200席。前売り券の売れ行きも好調だったため当日券は少なくなっていた。

開演間近は、楽屋で待機している出演者たちにとって最も緊張する時間だ。各自が深呼吸をしたり、座禅を組んだり、ヘッドホンでヒーリング音楽を聴いたりしている。

由香里が全裸シーンに備えてラメ入りのパウダーを叩いたカラダに1幕目のみすぼらしい衣装をつけ、ステージに登場した。